台風15号で大活躍の「ブルーシート」 最初はオレンジ色でブルーに変えた特別な事情

台風15号による被害は、千葉県を中心にまだまだ治まりそうにない。電気、水道はようやく復旧の見通しが立ってきたが、破壊された家屋にまでは業者の手が回らない。吹き飛ばされた屋根には、いわゆる“ブルーシート”が張られているが、これもまた、国からの支給品では薄すぎて雨漏りがするといった問題が生じている。

ブルーシートに薄い、厚いがあったなんて……。いまや全国各地、地震や台風、ゲリラ豪雨による災害が頻発する日本で、なくてはならない存在となったブルーシート。ところで、これっていつからあるの? そもそも素材は? 難問は尽きない。

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そこでブルーシートの国内トップ企業、岡山県倉敷市に本社を構える萩原(はぎはら)工業に話を聞いた。

――ブルーシートって何を原料に出来ているんですか?

萩原工業:ポリエチレンの合成樹脂です。分かりやすく言いますと、それを切って、伸ばして、巻いて、織るとシートになるわけです。まず樹脂を溶かしてフィルム状にし、短冊型に細長く切ります。そのままでは引っ張るだけで切れてしまうほど弱いものですが、熱板とロールを使って伸ばすことで分子が揃い、強度が増して、細くて強い平たい糸となります。これが弊社の開発した「フラットヤーン」です。完成した糸を1本ずつ巻き取り、織物にすると、白いシートが出来ます。それを青くコーティング(防水加工)することでブルーシートになります。

――萩原工業がブルーシートを開発することになったきっかけは?

萩原工業:そもそも弊社の親会社は、1892年に創業した畳表やゴザを扱う会社でした。その技術を元に花ゴザの縦糸をポリエチレンで代替するため、1962年に分社化したのが始まりです。その後、それまで綿で織られた帆布を使っていたトラックの幌を、軽くて低コストのポリエチレン織布に防水加工を施すことで代用できないかと取り組んだ結果、これが後々のブルーシートになります。2年後の64年、先ほどの「フラットヤーン」の開発に成功するのですが、幌を作って長距離試験を行った結果、風圧とはためきで破れてしまいました。結局、幌は諦めました。ただその間に、このシートの様々な利用価値に気付き、翌65年に「万能シート」を発売しました。

――いわゆるブルーシートの原型である。しかし、色はブルーではなかった?

萩原工業:私どもは当時、日通さんの輸送トラックの幌を作ろうと考えていたので、日通さんに合わせたオレンジ色のコーティング剤でシートを作っていました。それで「万能シート」もオレンジだったんです。ですから、当時は“オレンジシート”とも呼ばれていたようですね。

――それがなぜブルーに?

萩原工業:オレンジ色のコーティング剤に重金属(カドミウム)が含まれていると問題になったのです。もちろん、そんなものは初めから使用していませんが、噂が広まるとどうしようもない。それで業界団体で話し合いを持ち、青色に変えることを決定したのが74年でした。清々しい色ということもあったのでしょうが、最大の理由は、当時、バケツやホースなど、青色が多く使用されており、安価になっていた。さらに耐候性も優れていたからと聞きます。もっとも、青色が定着するのに3年ほどかかったようです。
台風15号で大活躍の「ブルーシート」 最初はオレンジ色でブルーに変えた特別な事情

ブルーシート製造過程の様子(萩原工業提供)
輸入品に押されるブルーシート

――ブルーシートの開発者は誰になるのか?

萩原工業:ブルーシートは、「フラットヤーン」なしには語れません。弊社は64年に開発に成功し、73年からは一貫生産しています。「フラットヤーン」を開発した弊社が、ブルーシートを開発したと言えると思いますが……ただ、特許も申請していませんからねえ。

――それはなぜ?

萩原工業:特許を申請すると、製造工程が盗まれるリスクがあるんです。とはいえ、いま国内で出回っている多くのブルーシートは輸入品なのですが……。

――萩原工業は国内シェアトップと聞くが?

萩原工業:はい、国産シートに限って言えば、9割は弊社の製品です。しかし、それも全体の10%くらいでしょうか。韓国企業が中国で生産している製品が多いようです。先ほど申し上げた通り、70年代中頃にオレンジからブルーに変わり、定着していくわけですが、同時に輸入品が国内で出回り始め、85年には15%を占めるようになりました。95年の阪神淡路大震災では、神戸市からの要請もあり、半年間でおよそ50万枚出荷したこともあります。その頃から自治体などで備蓄の概念が出てきて、それもあって輸入品も増えました。

――国産ブルーシートと輸入物は何が違うのか。

萩原工業:質です。全く違います。皆さんでも触っていただければわかると思いますが、輸入品は平糸が直角に交わるように織られていません。隙間が多くなることで、雨水が漏れます。被災地で使われたブルーシートで、雨が漏るという問題が発生したりしますが、これはブルーシートの厚みよりも製造方法の違いが原因でしょう。2016年に鳥取で起こった震災の際、県が備蓄していたブルーシートが被災地で配られました。すると、雨水が漏ると弊社に苦情が来たのですが、確認すると輸入品でした。現在、千葉県にも出荷させていただいておりますが、それでも半分以上は輸入品だと思います。もっとも、弊社のブルーシートの価格は、輸入品の3~4倍はします。それでも長期間使用されるのでしたら、こちらをお勧めします。

――品質には圧倒的な自信があるようだ。

萩原工業:そうですね。輸入物が国内に入るようになった時には、弊社も値段を安くして対抗しようとしました。しかし、こちらが値を下げると、向こうはさらに下げてくる。とても太刀打ちできないと、品質と機能重視に切り替えました。その間に、国内のメーカーは次々となくなっていきました。

――国内トップメーカーとはいえ、常に右肩上がりで来たわけではなかった。

萩原工業:先ほども申し上げた通り、オレンジ色でデマが広がったということもありますが、70年代のオイルショックでは、原料のポリエチレンが手に入らず、商品を思うように生産できなくなったことも。現金もなくなり、ボーナスは現品支給だったと聞いています。それと様々な分野で活用していただいているブルーシートですが、まだイメージがよくないのが悩みですね。80年代には工事現場に使用されるようになり、その後は事件事故の現場隠しに使われたり、ホームレスの住宅にも……その影響もあって、花見の場所取りにも景観上よくないと使えないところも出てきています。もちろん、花見用には“和みシート”という柄付きのシートも開発しています。素材はブルーシートと同じですけど。また、“埋蔵文化財保護シート”という商品もあります。埋蔵文化財発掘現場での保湿、防水、養生、景観保護に適したシートで、土色にしているのですが、関東向けの赤土色もありますよ。

――ブルーシートは土嚢袋などにも使われる素材だが、様々に応用が利くという。

萩原工業:弊社は「フラットヤーン」という技術を大切にしています。同じ合成樹脂素材でも、通気性を持たせた製品や、遮光性、防炎性を持たせた物。透明のものもあります。ブルーシートは、安い輸入品が多くなり、使い捨てのイメージが強くなっていますが、国産は防水性も耐用年数も格段に違います。ご予算の都合もあるとおもいますが、備蓄には国産をお勧めします。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190925-00584311-shincho-bus_all&p=2 Yahoo!ニュースより引用

 

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